おれの学校生活

5/19

30226人が本棚に入れています
本棚に追加
/896ページ
「それのほうが羨ましいわ!! なんなんですか! 自慢なんですか!」 「ちげーつーの!!」 始は鳳花ちゃんを見て、「あんな綺麗なお姉様に踏まれたい!」とか叫んでたからな。 まぁ確かに踏まれた……ゲフンゲフン。 確かなことはそのくらい綺麗だっていうことだ。 おれ、実は幼なじみだけどね。どや。 「お前だって妹いんだろ!」 凰が叫ぶ。 もはやこの二人、歩くのを忘れて口論している。 そのせいでおれは逆においてけぼりだ。 「確かにオレにはマイスウィート萌え萌えシスター莉緒たんがいるが、あの子は部活で帰って来ないんだよ! 家にいたんなら寝込みを襲ってレロレロクンカクンカするに決まってんだろ!」 莉緒ってのは始の妹だ。 こっちは可愛い系だがどことなくクールな感じでやはり顔は良いが性格がアレだ。 おれが始ん家に行くと必ずオモチャにされた。 「キモいって!」 凰は心底嫌そうに突っ込む。 「熟知している!」 始は楽しそうに言った。 始はアレだからな。キモいとか言われると喜ぶからな。 ……うん、いつもの会話だ。 暇、超暇。 なので、適当に鼻歌を開始した。 「オイぃぃ! 水月お前歌うなら射手座な歌だろぅが!! バカなの死ぬのォォォ!?」 聞いていたのかいきなり標的を変えてきた始。テンションが物凄い高い怖い。 しかし、 「……確かに!!」 それはもっともであった。 ノリノリでもってくしかないな! 「もうお前らなんなんだよ!?」 大声で、近所迷惑を考えずに本来の役目を果たす凰。 こいつは思いっきりツッコミ役だ。 「始!」 「水月!」 「おれ達の歌を聞けェェぇぇぇ!!!!」 「オレ達の歌を聞けェェぇぇぇ!!!!」 おれ達はもう止まらない! 止まれねぇぜ!! 「……おい、俺もう行くかんな」 凰は何か言って走りだす。 なんだアイツ付き合い悪いな、とおれ達は思いながらノリノリで持って行ってしまうが、 少し経った時にふと、気付く。 「……今何時?」 口を開いたのは始だ。 おれは真っ黒のスライドケータイを見てそれに応える。 「……八時三十八分」 学校には八時四十分までに登校しなくてはならなく、ここから学校は走っても五分かかる距離だ。 その時は呆然として絶望的、なんて思わなかった。 だが一瞬遅れて理解する。 「「どう考えても遅刻ですどうもありがとうございましたぁぁぁぁぁぁ!!」」 ジメジメした梅雨空の下、二人の悲痛な叫び声が響き渡った。
/896ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30226人が本棚に入れています
本棚に追加