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「キスされたからでしょーが」
昼休み。
昨日の悪天候から一転、今日はカラッと快晴。
気温も暖かく、私達はテラス席のあるカフェレストランでランチをしていた。
ジェノベーゼをくるくるフォークに巻き付けながら、由香はなーに当たり前のこと言ってんのよ、と呆れた顔。
「デート楽しかったんでしょ?キスされて嬉しかったんでしょ?」
「う、嬉しかったっていうか……」
手元のオムライスをカチャカチャとスプーンで割りながら、私は首をかしげた。
「ドキドキしたんでしょーが。なんで認めないのよ、惚れちゃったって」
「惚れてないよっ」
テラス席は私達しかおらず、少しくらい声が大きくても大丈夫。
そんな油断からか、思わず荒げた声。
由香が食べるのをやめて顔をあげた。
「なによ。なんでそんな頑なに否定するの?レンタのことを好きになるのの、なにがそんなにダメなの?」
「……ダメってわけじゃないよ。蓮太郎さんのこと、嫌いじゃないもん。だけど……」
「……だけど?」
言うのをためらう。
だってこんなこと、言うの恥ずかしい。
変なヤツって思われかねない。
けれど由香は容赦ない。
「だけど、なに?思うことがあるならハッキリ言ってよ。じゃなきゃ私、ユズハがレンタの恋心をコロコロ弄ぶ悪女だと思っちゃうよ」
悪女って。
もう。
「──っ、だって、そんなさ。キスされたから好きになったとかってさ。それって私、すごく軽い女みたいじゃない?」
「はあ?」
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