Cinderella falls in love ・・・

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ユズハのアパートの前に着き、路肩に車を寄せる。 ハザードランプのチカチカという点灯音だけが車内に響いた。 「……あの、ありがとうございました」 ぎこちなく沈黙を破ったのはユズハ。 「こちらこそ。楽しかった」 「わ……私も……楽しかったです」 ありがとうございました、とお礼を言った時に、体を少しこちらに向けるようにズラしていたユズハ。 けれど、視線は合わない。 彼女が俯いているから。 今、どんな顔してんのかな。 「また誘ってもいい?」 「……」 ……あ、考えてる。 「いい?」 ぐっと身を倒して、ユズハの顔を下から覗きこむ。 突然視界に飛び込んできた俺に、ユズハの目は丸くなる。 「はっ!はいっ!」 カクカクカクカク。 壊れたおもちゃみたいに首を縦に振るユズハ。 ウケる。 いちいち可愛いなー、ほんと。 ……あー。 キス。 したい。 思わず伸びた左手。 ユズハの頬に触れる。 ビクッと小さく固まるのが掌越しに伝わってくる。 ふくふくしてる。 柔らけー。 親指で撫でた。 「あ、あの……?」 頬を撫でられながら、ユズハが困惑気味に視線を泳がせている。 下を向いていたユズハの顔をクイッと上に持ち上げると、そのふっくらした頬にキスをした。 「──っ!!」 また、まん丸に見開いた目が俺を捕らえた。 「じゃ、またね」 キス、したかったけど、唇に。 今日はここで我慢。
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