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ある晴れた日の昼空の下
とある国の薄暗い路地裏で一人の男が走っていた。
質素な身なりから庶民であることが伺える。
「はぁ……
はぁ……」
男は後方を振り返り、誰もいないのを確認するとその場に立ち止まって息を整えた。
額では大粒の汗が光っている。
不気味なほど静かな路地裏には男の荒い息遣いだけが木霊していた。
そんな場所で男は元来た道を凝視し、なにやら警戒している様子だ。
何者かに追われているのか。
その時だ
!!
男の背後で乾いた足音が響いた。
驚きと恐怖で目を見開き、額の汗は激しさを増す。
恐る恐る振り返った視線の先には黒いローブを羽織った少年が立っていた。
漆黒の衣とは対称的な金色の髪に、澄んだブルーの瞳が薄暗い路地裏で異彩をはなつ。
端整な顔立ちの少年だったが、その両手には刀が握られている。
「ひぃ……」
我に返った男は慌てて踵を返し、路地裏を引き返そうと走り出した。
しかし、すぐに足を止めて立ち止まる。
「逃がさねぇよ」
行く手にはこれまた黒いローブを羽織った銀髪の少年が待ちかまえており、手先でナイフを器用に回転させていた。
「そんな……」
狭い路地裏で凶器を所持する2人の少年に挟まれた男は力なくその場に跪く。
もはや逃げ場などない。
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