Case01-Ⅰ≫桐谷 輪子(キリヤ ワコ)

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. 『“寂しい”……、ね。』 手の中のグラスをゆらゆらと揺らしながら、つぃ、と視線を外されてほっとして。 ……ん?と、安堵した自分に自問。 『寂しいんだ?』 『そりゃ、寂しいよ。 この歳まで独りなのは。』 『“楽”なんじゃなくて?』 また視線が戻る。 腹の底まで見透かすような、真っすぐな目をしているなと思う。 『……寂しいよ。』 そう、寂しい。 正直、独りの方が楽な気も、確かに今までしてたけど……。 “今は”、寂しい。 『独りは寂しいよ。』 きゃわきゃわとはしゃぐ“彼女達”に、冷めた目を向けていた自分を否定しない。 疲れそうだな、別に私はいいや。 めんどくさいし。 そう思っていた自分が確かにいた。 当然、そんな感じで努力もしなかった。 しようとも思わなかった。 だけど、そうして生きてきて最近ふと。 妙に寒々しい気分に襲われる事が多くなった。 十代の後半から時折感じていたそれが、ここ最近ちくりちくりと。 頻繁に私を刺すのだ。 それは例えば仕事を終えて暗い住み慣れたワンルームに帰り着いた時や。 友人と別れた後。 ざわざわとうごめく人の波の中に呑まれる時。 朝一番の陽光を最初にこの目に感じた時に訪れる。 …あれ? てな感じに、刺した後は呆気なくて。 痒みに似た痛みも直ぐに消えるけど、腹の底に穴でも開いたみたいな感じが。 暫く付き纏う。 妙にすーすーする。 ……嗚呼、これが“寂しい”だ。 相応しい名を知ったのは、同年代で既に相方を見付け、もうすぐ母となる友人と話した つい先程だが。 .
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