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『“寂しい”……、ね。』
手の中のグラスをゆらゆらと揺らしながら、つぃ、と視線を外されてほっとして。
……ん?と、安堵した自分に自問。
『寂しいんだ?』
『そりゃ、寂しいよ。
この歳まで独りなのは。』
『“楽”なんじゃなくて?』
また視線が戻る。
腹の底まで見透かすような、真っすぐな目をしているなと思う。
『……寂しいよ。』
そう、寂しい。
正直、独りの方が楽な気も、確かに今までしてたけど……。
“今は”、寂しい。
『独りは寂しいよ。』
きゃわきゃわとはしゃぐ“彼女達”に、冷めた目を向けていた自分を否定しない。
疲れそうだな、別に私はいいや。
めんどくさいし。
そう思っていた自分が確かにいた。
当然、そんな感じで努力もしなかった。
しようとも思わなかった。
だけど、そうして生きてきて最近ふと。
妙に寒々しい気分に襲われる事が多くなった。
十代の後半から時折感じていたそれが、ここ最近ちくりちくりと。
頻繁に私を刺すのだ。
それは例えば仕事を終えて暗い住み慣れたワンルームに帰り着いた時や。
友人と別れた後。
ざわざわとうごめく人の波の中に呑まれる時。
朝一番の陽光を最初にこの目に感じた時に訪れる。
…あれ?
てな感じに、刺した後は呆気なくて。
痒みに似た痛みも直ぐに消えるけど、腹の底に穴でも開いたみたいな感じが。
暫く付き纏う。
妙にすーすーする。
……嗚呼、これが“寂しい”だ。
相応しい名を知ったのは、同年代で既に相方を見付け、もうすぐ母となる友人と話した
つい先程だが。
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