Case01-Ⅰ≫桐谷 輪子(キリヤ ワコ)

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. 『ふぅん……?』 ――どうでも良さそうだな、突っ込んだ割に。 ちらりと窺えばその目はこちらを映していない。 琥珀色の液体を嚥下する喉の動きをぼんやりと眺めて。 酔いが回ってきたのか、ほのかに熱くなる頬を自覚しながら。 当たり前か、とも思う。 他人事だし。 自分が相手でも同じ反応を返す気がする。 『……“今”は違うの?』 『ん?』 終わった気になってグラスに口を付けたら、また隣から声がした。 ……あの子、遅いな。 『“今は”恋愛する気、あるんだ?』 『んー…多分。』 『“多分”?』 訝しげな声。 目を向ければ眉を僅かに潜めて、見つめる相手。 『寂しいな、とは思うけど……やっぱりめんどくさい気もする。』 『勝手だね。』 『うん、自覚はある。』 ますます相手の眉間に皺が寄る。 かと思えばそれがふっ、と緩んで、視線は再びグラスの上。 『だってわかんないし、疲れそうだし。 私のテンションで恋愛できるのか?、とも思うし。』 『“テンション”?』 『夢中になれればいいけど、なれなかったら虚しくない? ……相手にも悪いし。』 『へぇ…? 自分勝手な割に一応、そういう事は考えるんだ。』 『だって、こっちだけでも、あっちだけでも満たされないでしょ? それって、“独り”でいるのと変わらないじゃん。 一緒に居るなら笑ってて欲しいし、満たされて欲しい。 寂しい想いは嫌だよ、――自分が嫌なのに。』 『……。』 外れた視線が戻ってきて、まじまじと見られる。 妙に気恥ずかしい…というか、喋りすぎた。 色々と、変な事。 何語っちゃってるんだ、自分。 .
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