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「帝国がだと?信じられん」ビッシュは自分の馬に鞍を置きながら独り言を言った。
帝国の先王とは友好な関係で戦とは無縁のはずだった。
だが、先王が亡くなりアルバートⅦ世が王の座についた頃より帝国の様子が変わっていったのも事実であった。
「ビッシュ殿、私も隊に加えください」スタンスが馬小屋の入り口で声をかけた。
「貴君、大丈夫なのか」疲れはて傷ついたスタンスを観たビッシュは言った。
「私は大丈夫です。」
「守護隊の皆が心配か?」
スタンスは黙ったままうなずいた。
同じ立場なら自分もそうしていたとビッシュは思う。
「着いてこい」
ビッシュは馬にまたがると騎馬隊が待ち受ける城門前の広場に向かった。
城門前の広場には総勢50騎の騎馬隊がビッシュの到着を待っていた。
「隊長、帝国が攻めて来たとは誠でしょうか?」初老の騎士、アルタモントが言った。
「私も信じられないがな」ビッシュは後ろに着いているスタンスの蒼白の顔を観た。
アルタモントは手綱をきつく握り直した。
「騎士達よ!出発する。戦になる。十分に注意をしたまえ」ビッシュは馬上から言った。
前例にいる1人の若い騎士が喉を鳴らし唾を飲み込む。
ビッシュは横目でその若い騎士を観ながら思った。
我が騎馬隊にとっても共和国、全ての騎士とって初めての戦になるのだ。負ける訳にはいかない。
先頭にたったビッシュは騎馬隊をゆっくりと城下町を進ませた。民に不安感を与えない為の考慮だった。
城下町を過ぎ田園地帯に入った頃、ビッシュは後ろを振り向いた。
日の光りを受けた白鷺の城は光り輝いていた。
「騎馬隊、ゆくぞ」
号令と伴に騎馬隊は国境に向け駆け出していった。
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