72人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
『斎藤さん起きてますか?お茶を持って来ました』
私はお茶を持って斎藤さんの部屋に来た。
『あぁ…すまない…』
『大丈夫です。今日は非番ですか?』
『そうだが…どうした?』
『いえ、机に向かわれてたので…』
『………』
彼は斎藤一さん、雨の中屯所の前で倒れていた私を助けてくれた人…。そして私の想い人…。
この想いは、彼には言えない…
『斎藤さん、あの…書き物が終わったら一緒に…出かけませんか?』
『…別に構わぬが…』
良かったとホッとするが、緊張と不安で心臓が煽り始めた…。
『では、部屋に居ますので終わったらお声を掛けて下さい。』
『…承知した』
パタンと襖を閉めて、部屋に向かう…。すると
『どうしたの?なんか嬉しい事でもあった?』
後ろから、声がした。振り返れば沖田さんが居た。
『いいえ…あの…その……』
沖田さんは、私が斎藤さんを想っている事を知っている、沖田さんが言うに私は分かりやすいらしい。
『…斎藤さんと出かける約束をしました………』
そう言った今の私の顔は、赤いだろう…耳が熱い…。
『ふーん。良かったね』
と口は笑っていたが、目が冷たい沖田さん…。大方、私が斎藤さんと出かけるのが気に入らないのだろう…。最近、斎藤さん絡みの話しで私を虐めるのが、楽しみだと沖田さんに言われたからだ…
『なんですか沖田さん、その詰まらなそうな顔は…』
『えっ?嫌だなぁ、詰まらなくなんか無いよ!』
(だから目が笑って無いってば!)と心の中で呟く…。今の沖田さん相当、機嫌悪そう…玩具を取り上げられた子供の様に、タダをこねそうな顔をしている。早くこの場を去りたい…
『今日は出かけるので、お話出来ないです!また明日お話しましょう!!』
私は逃げる様に言葉を発した。
すると…
『明日絶対結果教えてね、じゃないと君、殺しちゃうよ!』
背中に悪寒を感じ『分かりました』と言いながら、その場を後にした。
部屋に戻り軽く身支度をした。すると、カシャン…。と髪飾りが落ちた…。(嫌な予感がする…)そう思っていると…
『…千春、居るか?』
斎藤さんが書き物が終わって、部屋を尋ねてきた。
『はい!今行きます。』
そんな予感も忘れて私は、襖を開けて外に向かう…。
最初のコメントを投稿しよう!