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高鳴る鼓動を抑え、桜の木を見た…。いつ見ても綺麗な桜、その木の下を見ると人影が見えた…。
俺は、駆け足で向かう。
…どうか彼女であってほしい
生きていて欲しい…
桜の近くに来ると、人影がハッキリと見えた。更に鼓動は高鳴った。白銀の長い髪、手には藍色の髪飾り…。姿は変わっていてもそこに居たのは紛れもなく、彼女だった…。
彼女は、桜を見上げ泣いていた、でもその姿は見惚れるほど美しく綺麗だった…
俺は、今にも抱きしめたい気持ちでいっぱいだった、が…
『……千春』
と俺は、声を掛けた。
すると彼女は、涙ながらもこちらを振り向き
『……さい…とう……さん』
彼女は、俺の名を呼んだ。近くに寄ろうと一歩踏み出すと
『……斎藤さん、ダメですよ…こっちに来たら、私は人ではないのです……今の姿だって私は…』
その続きを言わせまいと俺は、彼女を抱き寄せた…
『…さいと『…姿、形がどうであれお前はお前だろう…千春。』
彼女は、更に泣きだした…
『…でも、でも、私は…人では無いのです…この姿は…鬼で…風間と一緒で…』
『それがどうした。鬼だからと言って何が違う。今、俺の中に居る千春は、また別人なのか』
『…いえ、私は私です。斎藤さんに仕えていた…千春です…』
『では、一緒ではないか。鬼だと何故俺が、千春を拒まねばならぬ…
寧ろ俺は…この姿さえも美しいと…綺麗だと…思ったのだが…』
俺の口から思わぬ言葉を聞いた彼女は、少し顔を上げ俺の顔を見た。
『…それは…本当ですか…』
彼女の瞳に曇りは無くただ純粋に聞いてきた。
『…何故俺が、千春に嘘を付くのだ』
『…人でも無く、鬼でも無いこの姿が忌み嫌われていたので…』
『…だから何だと言うのだ…
…俺は寧ろ…千春を…好いている…』
初めて彼女に心の内を話した。
それを聞いた彼女は、更に泣いてしまった…
『…すまぬ、何か間違ったか…
』
『いいえ…嬉しいのです。人でも無い鬼でも無い私を、斎藤さんは好きと言ってくれた…』
彼女は、泣き笑いながらそう言ってきた。顔が熱を帯びるのが分かる、俺は更に言い続けた…
『……千春、俺はお前の過去がどうであれお前を愛している…この先に何があろうとも、必ず俺が守ってみせる…』
『…お願いします。』
彼女は恥ずそうに呟いた…
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