須本……咲く!

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広瀬が走り去ってすぐに、不良のうちの一人がドアを閉めた。 視聴覚室は日常から切り離された空間になる。 部屋には不良4人と俺。 俺と対峙している奴がリーダーだろう。金髪にピアス。いかにもって感じだ。 「後輩の前だからって、意気がってんじゃねーぞ!?」 言葉と同時に金髪野郎が殴りかかってきた。大振りの右ストレート。 俺は余裕でかわす。 続けざまに繰り出してきた左もかわす。 けっ。煙草ばっか吸ってる運動不足の不良どもが。 バスケ部なめんじゃねーって。身体能力がちげーんだよ!! 「おら。もう終わりかよ?」 格好がつかなくて顔を真っ赤にする金髪。 「来ないなら、こっちからいくぜ?」 金髪野郎に向かって足を踏み出す。が、身体が前に進まない。 ヘラヘラ笑ってた奴に、背後から両腕を抱えられていた。 (くっ……) 「須本テメェ……ナメやがって……」 チャッ。金髪野郎がブレザーのポケットから何かを取り出す。 俺の視界に飛び込んだのは、信じたくないモノだった。 バタフライナイフ── (おいおい……シャレになんねぇよ……) 青ざめる俺を見て、金髪野郎の顔に笑みが戻る。 「へへ……ちょっくら少年院行ってくっかなぁ!?」 金髪がおちゃらけると、他の奴等も笑う。 「やっちゃえやっちゃえ!」 「あ、でも、殺すとメンドーだから死なない程度にね(笑)」 こいつらマジでクズだ…… 金髪が、俺の頬にナイフを当てる。ヒヤリとする冷たさが、これが夢なんかじゃなくマジの出来事だって実感させた。 「良い顔になったじゃねぇか、須本。さっきまでの威勢はどうした? あぁん!?」 (くっ……この状況じゃ逆らえねぇ……) 「俺らをナメるからこうなんだよ!!」 言葉と同時に、顔面にパンチが飛んでくる。 頬に広がる鈍い痛み。イテェ……。だけど、金髪はナイフを左手に持ってる。どうやらただの威嚇で、刺す度胸はないらしい。 金髪が声高らかに他の不良達に言う。 「おいお前ら、須本が好きなだけ殴らせてくれるってさ」 金髪の声で、ドアの前で見張ってた奴と机に座ってた奴が俺の前にニヤつきながら近付いてくる。 くそ…… 今は我慢だ。チャンスを待つんだ…… 顔面。 腹。 サンドバッグのように、二人の不良が交互に俺を殴る。 こんな弱そうなクズどもに……すげえ屈辱だ……
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