序章

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H教授は70も半ば 越したと思われる 痩身の人物で 最初の挨拶から 漠として掴み所のない と言う印象を持ったが 話しているあいだに その印象は ますます 深まった 殺風景な診察室で 患者の座る丸椅子に 腰掛けて 甚だ居心地の悪い思い をしながら 教授の話を聞いた 教授はプラスチックの 物差しを弄びながら 出来の悪い生徒に 改心を促す主任指導 といった風情で 「水晶症」に ついて説明した
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