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相変わらずのいい天気でした。
少女はからんと晴れている空を睨み付けるようにしてからため息をつきました。空に浮かんでいる雲のように真っ白な少女の髪が風に揺れます。
遠くに暗くて重そうな雨雲が見えます。ああ、明日には雨が降るんだ、そう考えてから少女は思い出しました。傘を買うのを忘れていたのです。ああ、しまった。
雨が降ると知れば、少女は外に出たかったのに。少女は悲しくなります。
だって。
ああ、空はいくらでも泣ける。うらやましい。この世界をうめつくすほどに泣けるんだもん。うらやましい。
少女は、雨が空の涙だと思っていました。
だから羨ましいのです。とてつもなく、少女にとっては悔しいくらい羨ましい。
空に限らず少女にとっては、およそ泣ける人はすべてうらやましいのでした。
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