放送室は占拠しました。

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僕達は学園を離れ、それぞれの帰路に着く。 その途中、進藤からメールが着ていた。 『先輩あんなことして大丈夫ですか!? 馬鹿みたいでしたけど、ちょっとかっこよかったですよ!』 そんな内容のメール。 敢えて告白に触れない進藤に、少しだけ感謝した。 僕はそれに応える。 告白には触れない、当たり障りのない言葉で。 『自宅謹慎3日になった。引きこもりたかったからラッキーだよ』 こんな感じでいいだろう。 送信後、すぐに返信あり。 『うぅ~……羨ましいですけど、こんな無茶したら駄目ですよ? 心配、しますから。 次があったら五寸釘弁当です!』 うん。 シャレにならない。 進藤の場合、弁当箱に五寸釘を詰めてくるとか普通にやりそうなんだよな……。 だからこう返す。 『約束する。というかリアルには懲り懲りだ』 パタンと携帯を閉じて、ゆっくりと歩き出す。 暫く歩くと、少し先に人影が見えた。 夕陽に照らされて伸びる影、僕はその影を踏む手前で立ち止まった。 理由は簡単。 影の持ち主は、僕の知っている奴だったからだ。 「……何か用?」 「え……っと――」 僕はそいつに問い掛ける。 だけど、そいつ――花村は恥ずかしそうに俯いたまま、言葉を濁すばかりだった。 「用が無いなら、帰るけど?」 僕は溜め息だけ吐き出して、影を抜き去り、花村の隣を通り過ぎようとする。 「け、啓ちゃん!」 その名で呼ぶなと言うのに……! 「何?」 「うん、その――ありがと、ね」 あぁ……そんなことか。 別にあんたの為じゃなかったんだよ、全部僕の為だ。 だから、感謝の言葉は必要無いんだよ。 「噂……無くなればいいな? やっぱり、学園生活は平和が一番だ」 「うん。だけど、ありがと。啓ちゃん、ありがとう!」 「……はいはい」 何を言っても無駄みたいだから、僕は花村の言葉を受け入れた。 どうでもいいはずなのに……少しだけ、心が暖かくなった気がした――。
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