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「啓ちゃん」
「まだ何かあるのか?」
「謹慎中は、私がノート取るからね! 後で写していいよ」
「助かるよ」
「プリントも私が届けてあげるからね!」
「いや、それは千鶴姉に渡してくれたらいいから」
「うぅ……! あ、メールするから! 舞に教えてもらったの」
「僕の許可を得ろよ!? 安売りしすぎたろ僕の個人情報!」
「舞が知ってて私が知らないとかおかしいもん」
「花村に聞かれてないからな」
「聞いたら、教えてくれた?」
「あ~…………多分」
「ふふっ。ひどいなぁ、啓ちゃんは意地悪だ」
「あんたも大概意地悪だよ……」
「いやいや~啓ちゃんには負けちゃうよ?」
「どうだかね」
僕達は下らない話をしながら道を歩く。
2人の間には距離がある。
恋人同士の距離ではなく、だけど友達の距離でもない。
その中間。
どこか懐かしい空気を感じた。
あの夕凪市で、いつか……花村とこんな感じで歩いたことがある気がする。
隣を歩く花村は幸せそうで、僕は花村の綺麗な笑顔に頬を赤く染めた。
照れ隠しに後ろを振り返る。
そこには、夕陽に照らされて伸びた僕達の影が、まるで手を繋いでいるかのような距離で寄り添っていた。
何だか笑える。
影だけ見れば、僕は誰にも負けないくらい……リア充じゃないか。
たまには、こんな優越感もいいかもな――。
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