親友の為に

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自宅謹慎初日。 僕は普段学園へ行くときと同じ時間帯に、千鶴姉に起床を促された。 正直、せっかく平日にダラダラ出来るのだから、昼過ぎまで寝るつもりだったんだけど。 「駄目だよ~謹慎中はいつも通りに起きてもらうからね、啓くん」 というのが千鶴姉の主張である。 因みに拒否を試みたところ、 「もし……それが出来ないなら啓くんの貞操を奪うからね~」 とんでもない返事をされてしまった。 仮にも教師だろ、千鶴姉……。 貞操を奪われるのは中々魅力的なことだったが、僕と千鶴姉は教師と生徒でありそれ以前に親戚だ。 有り得ない有り得ない。 え? いとことは結婚出来る? 知るか。 千鶴姉は僕にとって本当の姉に近い。 好きか嫌いかと問われたら当然『好き』を選ぶが、それは恋愛感情ではないのだ。 よって、貞操を奪われるわけにもいかないので、起床時間はいつも通りにすると千鶴姉に約束した。 しかし。 早起きしても学園へ行くわけでは無いので、当然時間を持て余す。 僕は取り敢えず自室に戻り、ベッドの中に潜り込む。 携帯の電源を入れると、新着メールが何件か届いていた。 差出人は花村、進藤、玉乃井、晃か。 普段ならば無視するのだが、今は暇である。 上から内容を確認し、返信してやるか……。 まずは花村。 『おはよ~啓ちゃん! 学園新聞が新しくなってたよ。噂の否定と、私達への謝罪文みたい!』 へぇ。 玉乃井あたりが記事を書いたんだろうな……後で礼を言っておくか。 返信。 『そうか、よかったな。ノート、無理に取らなくてもいいからな』 これでよし、と。
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