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……花村 香澄、なんかイメージとちゃうなぁ。
もっと大人しいというか、清楚な女やと思っとったけど。
「なるほどなぁ、あんた……うちのライバルには相応しいかもしれんな?」
「ライバル?」
うちは凄惨な笑顔を浮かべとるやろうな。
なかなか燃える展開や。
「あんた、啓介に惚れとるんやろ?」
うちの言葉にざわつく教室内。
そやけど、思っとった以上ではない。
多分やけど、クラスの連中は花村の気持ちを知っとるんやろう。
つまり、ざわついた原因はうちのさっきの言葉や。
――あんた……うちのライバルには相応しいかもしれんな?
花村も動揺を隠せとらん。
うちが啓介を狙っとるって理解したんや。
「あ~。驚きの展開なんだけどさ、悪いけど啓介の家は教えれないんだよな」
ん?
「何でや?」
「東雲くん、どういう意味?」
「啓介と約束してる。俺は啓介の家知ってるけど、教えるわけにはいかないんだ。まぁ、そういうことだから」
それだけ告げて、晃は席から離れていく。
あかん、予想外や。
「ちょっ!? ま、待ちぃや晃! 別にかまんやないか、うちと啓介は知り合いなんやで?」
「だとしても――」
晃は一度だけ立ち止まり、うちと花村へと振り返る。
瞳に、有無を言わさん決意を宿して。
「約束は約束だ。啓介を裏切るわけにはいかない――これ以上」
「晃!」
「東雲くん!」
うちらの声を無視したまま、晃はそのまま姿を消してしもうた。
――啓介を裏切るわけにはいかない――これ以上。
どういう、意味や?
意気揚々で乗り込んだうちやったけど、今は何だか陰鬱な気分やった。
何か引っかかっとる。
やけど、ひとつだけ確信したことがあった。
啓介をどうにかするには、まずは晃をどうにかせなあかんってことや。
「おもろいやん」
うちは凄惨に笑った。
ワクワクするやん、久々や、こんな気持ちは――。
†
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