4306人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
†
「お前さ、なんかうざいんだけど」
「そうか。悪かったな」
「……そういうところがうざったいんだよ」
「生まれて今までこんな調子なんだ。別に、お前に迷惑はかけてないだろう?」
「はっ……苦労したんだろうな。今までお前と関わってきた奴は」
「……どうかな」
「友達も恋人も、いや恋人以前に好きな人も出来たことないんだろ? いつもいつも独りで、本ばっか読んでるようなお前みたいな奴に。家族も苦労してるだろうな」
「――肯定すれば満足か? 東雲、だったか?」
「満足以前に、否定出来ないんだろ? 神無木」
「……いたよ」
「はぁ?」
「いたよ……好きな人が。誰よりも何よりも、自分よりも大好きな人が――だけど」
「だけど、なんだよ?」
「もういない。僕には、もう……誰もいないんだよ――」
†
屋上へと向かう間、頭に浮かんだのは啓介と俺が交わした、最初の言葉だった。
中学二年の時、俺は啓介と出会った。
入学して二年目、ある程度仲良しのグループは出来上がってたし、啓介が孤立するなんて予想がついていた。
それでも『転校生』というものは注目を浴びるものだ。
死んだような瞳と陰鬱なイメージを与える髪型を除けば、啓介はいい顔立ちをしてたから、やはり最初はみんなに構われていた。
†
最初のコメントを投稿しよう!