親友の為に

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「啓介には昔、彼女がいたんだよ。けど、事故で死んでる」 「えっ……?」 「別に有り得なくは無いだろ? 交通事故で死ぬ人なんて、沢山いるんだし。まぁ、不運だけど……啓介の彼女さんはそれに遭ってしまった」 というか、俺は桂木にこんなことを言っていいのだろうか? けど言い出したからにはなぁ。 「んで、更に家族も事故で失った。だから今、啓介はいとこである矢野先生の家に住んでるんだよ」 「それ……辛いね」 「だな。啓介がそれを話してくれた時はさ、俺もまいっちゃったよ。かける言葉が見つからないんだよな」 「うん」 「で、考えた。啓介に辛い過去を忘れてもらう方法を」 「どんな方法?」 ……言いづらい。 今の今までノリで話してきたけど、この先は言いづらい。 いや、別にさ。 話してもいいんだぜ? けど、話したら話したで、結構イタい話なんだよ。 つまり、過去の俺は大馬鹿野郎で、俺自体悔やんでいるわけで――。 「東雲?」 うっ。 桂木は可愛らしく、のぞき込むように俺を見上げてくる。 というか可愛い。 綺麗で、更に可愛いとか反則じゃないか? 桂木に彼氏がいないのが不思議で仕方ない。 てかどうする!? 言うの!? いやいや、言うしかないんじゃないか! 「……ギャルゲーを薦めてみた」 「…………はぃ?」 やっべ。 時が凍り付いたのが分かったよ今。 白状してみたけど、まぁ……桂木は予想通りの反応を返してくれた。 優等生なのは素晴らしいが、時には模範解答以外の解答も模索してもらいたいところだ。 痛い痛い。 そんな冷めた目で見るんじゃないよ!
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