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「結果、は……」
多分これ以上、というかフォローは全く無さそうだから話を進める。
「一ヶ月後、啓介は俺にこう言ったんだ……『晃、僕は決めた。もうリアルでなんか恋をしない。だって……この世界ならどんな恋愛も苦しくないだろ?』と」
「だよね! 今の神無木はこうして作られたんだね! 東雲にはがっかりよ!」
「いやいや! そう言われたら否定の仕様はありませんけどね! 昔の俺は俺なりにこう……頑張ったんだよ!?」
「それにしても……もっとやりようはあるでしょ? なんか、完璧に安易な方法選んでるじゃない……」
だから嫌だったんだよ。
桂木、絶対怒る気がしたんだよなぁ……やっぱり怒られたしな。
桂木はしばらく過去の俺に文句をぶつけていたが、やがて大きな溜め息を吐き出すと、
「それで?」
と口を開いた。
俺は何を言っているのかが分からず、首を傾げてしまう。
「だから、そういう過程があることは分かったけど、それと東雲が神無木を裏切ることにどう繋がるの?」
「あぁ、なるほど。そう言えば元々はそんな話だったな」
「うんうん。もう昼休み、終わっちゃうしね?」
更にそう言えば今は昼休みだった。
既に時間がやばい。
手短に答えるか……。
「啓介と約束したんだ。あいつが、リアルで恋愛をしないって言った時に」
「どんな約束?」
「あいつがリアルで恋愛をするまで、俺も……恋愛をしないって」
「え……?」
「それだけ。でも最近さ、それが難しいんだ。俺、好きな奴が……出来たんだよ。啓介を裏切ってるんだ。だから、これ以上約束を破るわけにはいかないんだ」
俺が言い切った直後、昼休み終了を告げる鐘が鳴る。
慌てて屋上の出口に向かおうとした時、桂木は小さく、
「何よ……全然納得出来ない」
そう呟いた、気がした。
†
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