親友の為に

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「……おかしい。まるで問題が理解できない」 既に、普段ならば放課後であろう時間帯。 僕は自室で静かに呟いた。 ゴリ山から手渡された問題集。 いくつかの教科の課題は片づけたが、現在行っている数学だけがどうにもならない。 学年でもトップクラスの僕に解けない問題とか、どうなんだ? 有り得ないだろう。 僕は問題集を投げ捨て、ベッドへと倒れ込む。 結局、今日はひたすら勉強ばかりしていた。 昼休みぐらいに、進藤からメールが何通か来たが、あまり返信もしていない。 課題に集中していたし、何より……。 「やっぱり、今までみたいにはいかない……か」 そう。 僕と進藤は、もう今までのような『共通の趣味を持つ友人』ではなくなってしまっていた。 今は告白をした後輩と、その返事から逃げている先輩という関係でしかない。 ……文面だけ見ると、僕はとんでもないヘタレみたいだな。 否定も出来ないが、出来れば肯定もしたくない。 「僕なんかの、どこがいいんだか……」 僕の世界での僕に告白するのならば納得はいく。 だって、女の子から告白されまくりだしな。 だが、進藤はリアルの住民であり、リアルでの僕に告白をしてきたのだ。 正直、どうすればいいか分からない。 だから放置。 だから逃げる。 ただのヘタレだった。 「あのテラリア充にでも相談してみるか?」 いや、いやいや。 晃に相談なんてしてみろ。 どうせ僕と進藤をどうにかしようとするに決まっている。 それだけは勘弁してほしい。
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