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「ようっ! 親友」
「帰れ」
玄関で扉を開けた先に居たのは、晃という名の親友だった。
取り敢えず一蹴。
扉を閉めようとしたが――。
「まぁまぁ! まぁまぁまぁまぁ!」
「やっかましい! いいからドアに挟んだ足を退けろ!」
まるで嫌なセールスマンの如く、晃は我が家へと侵入してきた。
ふざけてるのか!?
警察に通報したらお前逮捕されるぞ!
「晃、何か用か?」
僕は溜め息を吐き出して、諦めて問いかける。
対して。
既に自室にて図々しく侵入している晃は振り向き様に、眩しいくらいの笑みを浮かべながら口を開いた。
「久し振りに……やらないか?」
「断る。僕にはその気はないんだ」
「お前!? 何をイメージした! 俺だってそんな気はねぇよ!」
「ああ。すまない、ついついそんなイメージが浮かんだ。気持ち悪くて吐きそうだ。帰れ」
「頑なに追い出そうとしやがる! お前、そんなに俺が嫌いか!?」
「嫌いに決まってる。どれだけお前は僕の世界の邪魔をする気だぁ!?」
「現実を見ろやぁ!」
†
数分後。
僕と晃は隣り合って腰掛け、必死にコントローラーのボタンを弾いていた。
「おっ? おぉ……おらぁっ!」
「む、むむ……あ、あぁぁあ!?」
無駄に白熱した叫びをあげながら、僕達は時を過ごしていた。
画面には可愛らしいキャラクターがブイサインをしている場面が映っている。
因みに文字は……『2PWIN!』である。
つまり格闘ゲーム。
更につまり、2Pは晃である。
更に更につまり、僕は晃如きに負けたということだ。
「お前……何時の間に腕を磨いた」
「ふふ。馬鹿め……前に啓介にボコボコにされて以来練習してきたんだよ」
どや顔をやめろ。
やることが姑息過ぎるだろうが。
だが、負けたまま引き下がる僕ではない。
「晃、ワンモア」
「はっ! いくらでもボコボコにしてやるぜ!」
「目潰し」
「あっぶっなぁ!?」
必殺を回避された。
残念で仕方ない……出来れば確実な勝利が欲しかったんだがな。
勝利が欲しくて裏で練習をしてきた男子高校生がいた。
確実な勝利が欲しくて対戦相手の目を潰そうとした男子高校生がいた。
僕の方がよっぽど姑息な人間だった。
ヘタレで、姑息で……リア充になれる要素がまるで無いな、我ながら。
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