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晃ではない、柔らかな女性特有の声質。
そして、泣いているであろう辛く切ない嗚咽。
僕は携帯を耳から離し、相手の名前を確認した。
表示されていたのは、
桂木 舞
泣いている姿を全くイメージさせない、彼女からの電話だったのだ。
勿論、僕には泣いている女性への対応なんて分からない。
僕の世界ならともかく、ここはリアルだ。
リアルでの僕は、情けないくらいに役に立たない。
そんなことは分かっていたが、こんな状況で、無視することは不可能だ。
僕は追い詰められた様な心境で、震えるように口を開く。
「桂木?」
『うっ……う、だって……神無木の家、知らない』
いや、知ってたら怖いからな。
律儀に応えてくれたのは嬉しいが。
と、そんなのはどうでもいい……これは、何が起きている?
桂木が泣いている、全くイメージが浮かばない。
泣いている理由は……何だ?
「……花村と、喧嘩でもしたのか?」
『ち、違――わ、私……私ね』
違うのか……。
だとしたら――まさか。
『し、東雲に……告白、したの』
は?
告白した?
告白されたんじゃなくて……告白を、した?
いや、だったら……どうして桂木が泣く。
晃は、桂木に、恋をしていたはずだろう?
何が起こった?
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