親友の為に

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僕は夜の道を走っていた。 ひたすらに、ただ真っ直ぐと。 頭にあるのは、泣いていた桂木の声。 そして、晃との日々。 最初は、『嫌な奴』という印象しかなかった。 自由で。 いつも笑顔で。 誰かがいつも、隣にいて。 僕には無い。 違う、僕が『無くしてしまった』全てを晃は持っていた。 それが羨ましくて、それが妬ましくて――大嫌いだった。 だけど、いつからか。 僕の隣にはいつも、晃がいたんだ。 過去を話して、打ち解けて……僕に『僕の世界』を与えてくれた。 毎日をただ過ごしていた僕に、新しい世界を与えてくれた。 あいつは、いつも恥じることなく、僕を『親友』と呼んだ。 あぁ、そうだよ。 口では否定しているけど、僕だって、晃を『親友』だと思っている。 隣に居ないことが有り得なくて、隣に居ることが当たり前な存在。 きっと……。 晃が僕との、些細で、下らない約束を守っているのは。 あいつも、僕と同じ様に思っているからだ。 だけど。 そんなのは間違ってる。 晃が僕の幸せを願うように、僕だって晃の幸せを願っている。 幸せになれるのに、それを放棄する? 馬鹿らしい。 一方通行な思いやり。 そんなの『親友』じゃない。 そんなのが『親友』なら――! 「晃ぁぁぁあぁあっ!」
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