親友の為に

30/33
前へ
/246ページ
次へ
晃は暫く口を閉ざし、僕の瞳から逃げるように俯いていた。 おい、馬鹿野郎……。 どれだけ女々しい態度をとるつもりだ。 お前のことを散々主人公呼ばわりしてきたのは確かに僕だが、そんなよくあるギャルゲーのへたれ主人公みたいなお前は見たくもないんだよ。 僕が知ってるお前はいつもヘラヘラ笑ってるが、やることはしっかりとやり遂げる奴だろう? いい加減にしとけよ、晃……温厚な僕でもキレてしまいそうだよ。 「……せな、わけ無いだろ」 「……あぁ?」 怒りの鉄拳をぶちかまそうとしていた矢先に、晃の呟きが耳に入る。 全く聞き取れなかった。 反射的に聞き返すと、晃はガバッと顔を上げ、僕を睨むように……違う違う、睨んでるな。 ん? お前に睨まれる理由が見当たらないんだが。 「幸せなわけ無いだろが! 馬鹿啓介!」 「逆ギレっ!? というか、幸せじゃないことぐらいは理解してるんだよ。馬鹿はお前だ。僕なんかより……好きな奴を優先しろよ」 「だ、だけどなぁ! 昔、約束しただろ!? 俺は俺なりにさ――」 「そもそも、お前は約束約束って言ってるが……」 「お前だって覚えてるだろ?」 覚えてるが……あんな約束を律儀に守るこいつは何者なんだよ。 色々と面倒になってきた。 「覚えて――ないな。お前と約束したのか? どんな約束だよ、大体……晃が約束を守ったことがあったのか?」 「覚えて、ない? いや、けど――」 空気を読めよ馬鹿野郎。 こっちが約束を忘れたフリをしてやってるんだ。 お前もそれに合わせろよ! そうしたら全部解決するだろうが! 僕は必死にそう瞳で訴えかけてみるが、どうやら晃には通じていないらしい。 あれ? いつぞや目覚めたアイコンタクトで会話を成立させるというチートスキルはどこに消えたんだよ。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4305人が本棚に入れています
本棚に追加