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晃は暫く口を閉ざし、僕の瞳から逃げるように俯いていた。
おい、馬鹿野郎……。
どれだけ女々しい態度をとるつもりだ。
お前のことを散々主人公呼ばわりしてきたのは確かに僕だが、そんなよくあるギャルゲーのへたれ主人公みたいなお前は見たくもないんだよ。
僕が知ってるお前はいつもヘラヘラ笑ってるが、やることはしっかりとやり遂げる奴だろう?
いい加減にしとけよ、晃……温厚な僕でもキレてしまいそうだよ。
「……せな、わけ無いだろ」
「……あぁ?」
怒りの鉄拳をぶちかまそうとしていた矢先に、晃の呟きが耳に入る。
全く聞き取れなかった。
反射的に聞き返すと、晃はガバッと顔を上げ、僕を睨むように……違う違う、睨んでるな。
ん?
お前に睨まれる理由が見当たらないんだが。
「幸せなわけ無いだろが! 馬鹿啓介!」
「逆ギレっ!? というか、幸せじゃないことぐらいは理解してるんだよ。馬鹿はお前だ。僕なんかより……好きな奴を優先しろよ」
「だ、だけどなぁ! 昔、約束しただろ!? 俺は俺なりにさ――」
「そもそも、お前は約束約束って言ってるが……」
「お前だって覚えてるだろ?」
覚えてるが……あんな約束を律儀に守るこいつは何者なんだよ。
色々と面倒になってきた。
「覚えて――ないな。お前と約束したのか? どんな約束だよ、大体……晃が約束を守ったことがあったのか?」
「覚えて、ない? いや、けど――」
空気を読めよ馬鹿野郎。
こっちが約束を忘れたフリをしてやってるんだ。
お前もそれに合わせろよ!
そうしたら全部解決するだろうが!
僕は必死にそう瞳で訴えかけてみるが、どうやら晃には通じていないらしい。
あれ?
いつぞや目覚めたアイコンタクトで会話を成立させるというチートスキルはどこに消えたんだよ。
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