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そんな過去にはあった奇跡を信じてみたが、いくら目で訴えかけても晃は気付きそうに無い。
終いには俯き、
「だけど……」
と小さく呟いていた。
そんな晃を見ている僕は、何だか複雑な心境である。
約束を律儀に守っていることを、少し嬉しく思っている自分がいた。
僕からすれば下らない約束を一々守ろうとしている晃に苛々している自分がいた。
そんな、様々な思いが胸を支配していく。
どれが本当の自分なのか分からない。
ただ、これだけは、はっきりと分かっていた。
「晃……そんなお前、見たくないんだよ」
そう。
これだけは揺るがない。
僕にとって晃は『主人公』なんだ。
そして、主人公はいつも、胸を張り、自信に溢れているべきなんだ。
幸せを掴むべき存在なんだ。
だから。
僕は言う。
他の誰でもない、親友の為に。
リアルには興味すらないが、こいつの為なら、僕だって脇役になってやるさ。
僕の世界ではいつも、親友ポジションの奴が背中を押してくれているんだ。
だったら、リアルでは僕がそのポジションを演じてやる。
「お前はさ、いつもみたいに笑って、自信満々でいてくれよ。僕はそんな晃と親友なんだよ」
「啓介……」
「約束……今まで守ってくれて、ありがとう」
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