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くそ、我ながら恥ずかしいセリフだ。
何を優しい口調でほざいてやがるんだ僕は。
相手は晃だぞ?
いや、しかし今は役に徹しないと。
やば、鳥肌がやばい……。
「お前は、僕がリアルで幸せになることを望んでくれていたんだろう? それは素直にありがた迷惑だが、僕は別に、今が幸せじゃないことはないんだよ」
「どういう……意味だよ」
「恋愛だけが、幸せに繋がっているわけじゃないんだ。僕は美月さんを失って、家族も亡くした」
僕はゆっくりと口を開く。
これは、僕の本音だ。
晃に届くように、それを口にした。
「だけど、今は家族がいる。クラスメートとも、最近は少しだけ壁が無くなった。やたらと絡んでくる花村や桂木がいて、やかましい玉乃井がいて、趣味の合う後輩がいて……」
僕の今は、きっと僕の選択してきた道の上に出来ている。
それは間違い無い。
だが、その選択肢を与えてくれたのはこいつだ。
あぁ、くそ。
らしくない……全く僕らしくない。
話している内に、胸が熱くなっている。
晃に対する、今までの感謝の気持ちが溢れてくる。
頬を伝う、冷たい雫。
僕は泣いていた。
「……け、啓介」
くそ……見るなよ、馬鹿野郎。
僕だって、何でこうなったか分からないんだから。
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