親友の為に

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「僕の今があるのは、間違い無く晃のおかげなんだよ……! お前がいたから、僕はリアルで生きてこれたんだよ!」 やけくそだった。 僕は声を荒げて、必死に訴えかける。 「そんなお前が、僕なんかの為に幸せを逃すなよ! お前が僕の幸せを願うように、僕だってお前の幸せを願ってるんだよ!」 「啓介……!」 「互いの幸せを、願って、祝福出来る関係が『親友』だろう! お前は、僕の何だ? 同情で一緒に居るだけの、偽りの親友か?」 「――っ、違うに決まってんだろ! 俺はお前の……親友だ!」 気付けば、晃も泣いていた。 晃も、声を荒げて叫んでいた。 どれだけ近所迷惑なんだよ、僕達は……。 一瞬だけ、冷静な状況把握が出来たが、今は理性が働かない。 それに、もうこのイベントも終わりに近い。 だから、終わりにしよう。 僕は息を大きく吸って、晃に叫んだ。 「だったら行けよ! 主人公が好きな女を泣かすな、そんなの、晃じゃないだろ!」 「っ――! ああ、分かってるっての!」 晃は大きく頷いて、僕の横を駆け抜けていく。 そして、振り返る。 「啓介、サンキューな!」 そう言った晃は、とても清々しく笑っていた。 あいつらしい、いつもの笑顔。 僕はそれに手を上げて応え、少しだけ微笑む。 きっと。 これでイベントは終わりのはずだ。 僕らしくもない。 損な役割ばかりの下らないイベント……。 まぁ、晃の為なら仕方無い。 この僕がこんなにも頑張ったんだ。 だったら当然――。 † 「桂木!」 「え……!? し、東雲? 何で私の家知ってるの!?」 「花村に聞いた。そんなことより……」 「……う、うん」 「俺、いや、俺も……俺もお前が好きだ! 誰よりも、きっと、いや絶対誰にも負けないくらい、桂木が好きだ」 「う、嘘じゃ――」 「嘘なんかじゃない! だから、俺の彼女に、なってくれないか?」 「……っ、うん、うん! 嬉しい、私も……東雲が、大好きです」 † だったら当然。 このイベントの結末は、ハッピーエンドに違いないだろう? 主人公は、大好きなヒロインと結ばれて、幸せになる。 そんなの、僕の世界でも、この下らないリアルでも。 決まってることじゃないか。
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