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教室に戻れば、始業式の前と変わらない騒がしさだった。
新しいクラスになっただけなのに、何が嬉しいんだろう?
「……ホームルームまで、少し時間があるな」
僕は自分の席に座り、時刻を確認。
あと15分はある、それだけあれば、小雪との時間を少しは取り戻せるな。
携帯ゲーム機を起動してデータをロード。
こまめにセーブしていたお陰で、僕と小雪の時間はそこまで失われていなかった。
ふむ。では早速小雪との甘い一時へ!
と、思ったが、晃がまた口出ししてきたら死ぬほどうざいので、イヤホンを装着しておく。
よし、準備万端だ。
『もうすぐクリスマスね』
データをロードした途端に響く、小雪の声。
普段が刺々しいだけに、彼女がデレた時の可愛さは半端無い破壊力を持っている。
彼女のルートも終盤に近い。今日中に終わらせて、次の女の子に会いにいかないとな。
『別に、あ、あんたのことなんて興味ないわよ!』
くぁ~ツンツン度合いがいいなぁ。
ツン期が強ければ強いほど、デレた時の感動は高まるものだ。
小雪はそれを分かっている……うん、いい女だ。
「啓介」
小雪に感動している最中に、イヤホン越しから嫌な声が聞こえてきた。
当然、無視を決め込む。
「啓介~。今日、クラスメンバーでカラオケ行くらしい。当然参加だろ?」
「断る。何が当然なんだ? 僕がそんなのに参加するわけないだろ」
無視するわけにはいかない話題だった。
取り敢えず即斬り捨てておく。
当然、晃は引き下がらない。
「馬鹿。当然だろう、クラスメンバーと親睦を深めるのはいいことた」
誰だよこの好青年。
悟ったような表情浮かべやがって……。
「そうだな。親睦を深めるのはいいことだ。僕もお前に従って親睦を深めるとするよ、小雪と――」
「クラスの奴らと親睦を深めろっての」
最後まで言わせろよ。
小雪の後は皐先輩と親睦を深める予定なんだから。
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