「疑い」

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春の放課後だった。 体育館前の渡り廊下にミズキは来た。 来た、というよりも「呼び出された」という方が正確だ。 新体操部に入部したてのミズキが2年生のユリから呼び出されたのは昼休みだった。 渡り廊下にひと気がないのは、教師たちが全員出張のためだった。 白く塗られた鉄の柱に背中をもたれたユリは、腕を組んでミズキを待っていた。 「あの…」ミズキの言葉をさえぎるように、上級生のユリが切り出す。 「ちょっと、あんた」ユリの黒く大きな瞳がまっすぐにミズキを捕えた。
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