2人が本棚に入れています
本棚に追加
春の放課後だった。
体育館前の渡り廊下にミズキは来た。
来た、というよりも「呼び出された」という方が正確だ。
新体操部に入部したてのミズキが2年生のユリから呼び出されたのは昼休みだった。
渡り廊下にひと気がないのは、教師たちが全員出張のためだった。
白く塗られた鉄の柱に背中をもたれたユリは、腕を組んでミズキを待っていた。
「あの…」ミズキの言葉をさえぎるように、上級生のユリが切り出す。
「ちょっと、あんた」ユリの黒く大きな瞳がまっすぐにミズキを捕えた。
最初のコメントを投稿しよう!