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次に目を覚ましたのは詩織を抱いた小児科の先生に声をかけられた時でした。
手術は全て終わっており、詩織を見せに連れて来てくれたのです。
意識は朦朧としていましたが、愛しい我が子を一目見ようと目を開けました。
詩織はもう泣いてはいませんでした。ただ小さくて赤くて…。そんな姿を見て愛しい気持ちが広がると当時に違和感を感じました。
『あれ、お口が変。』
朦朧とした頭でそれだけ思ったことを鮮明に覚えています。
「お口は手術すれば治りますからねー。」
小児科の先生がびっくりする私に気づいたのかそう言いました。
その時は疲労と麻酔のせいで深く物事を考えることが出来なかったので、お口が変なことも、幼い娘が手術を受けなくてはいけないことも全部ただの『情報』として頭に入りました。
だからショックもそんなにはっきりと受けていなかったように思います。
そういう意味では帝王切開でよかったのかもと思わなくもありません。
普通分娩だったらきっともっとショックを受けていただろうから…。
結局その小児科の先生の言葉にも『そっかぁ…。』って思っただけでまた再び眠りについていました。
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