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「ええ、6大都市と王都に1つずつね」
「で、確か3年間の義務教育だったよな。しかも16からだし、今年からってんなら年齢的には納得いく」
「でしょ?2人とも大きくなったわぁ」
感慨深く目を細める母さんは嬉しそうで、しかしグレイスはピシャリと言い放った。
「しかしだ、俺達には魔力なんてないし、その義務教育は適応されないんじゃないか?」
グレイスの指摘に、アタシも一緒になって大きく頷く。
だって魔力のまの字も、今まで感じたことがない。
だけど母さんはまだ嬉しそうに笑ったまま、穏やかに口を開いた。
「国からの手紙なら間違いはないわ。貴方達にもきっと魔導師の卵(ガーディアン)の素質があるのよ」
「いや、そんなアバウトな……」
半ば呆れるグレイスを諭すように、母さんは笑いかける。
「2人が魔導師の卵だなんて…嬉しいわ」
それきり、フフフと笑った母さんは本当に嬉しそうで。
結局何も言えなくなったアタシ達は、ディオール学園に入学することを余儀なくされた。
後でグレイスに聞いた話だけど、魔導師育成学園は全て全寮制なんだとか。
全寮制ってことは、ほとんど家には帰ってこれない。
それでも母さんは入学式の日、笑って送り出してくれた。
片割れのシルバーイヤリングをアタシとグレイスにそれぞれ託して、微笑む母さんを背に家を出た。
……もうこうなったら腹をくくるしか道はない。
こうして、アタシ達は平凡と別れてディオール学園に向かうことになったんだけど──
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