01.魔導師の卵

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「ここはどこ?」 ディオール学園へ向けて(一応)意気揚々と家を出たはずなのに、目の前に広がるのはどこかの街で。 首をひねれば、隣からアホかと言わんばかりの目で見られた。 「ちゃんと人の話を聞いてろ。 最初の目的地は『ルベリア』っつー魔道具から魔導書まで一式そろう、有名な魔術街だ。そこで学園生活に必要なモン揃えるからなって言ったろ」 「……言ったっけ?」 まったく身に覚えがなくて素直に述べれば、グレイスは呆れたのか、スルーして足早に街に入っていった。 ……いつものことだけど、グレイスは素でヒドイ。まあ、5年も経てば態度も変わるだろうけど。 とそこまで考え、アタシは少し距離のあいたグレイスに向かって、慌てて歩き出した。 しばらく歩けば、更に賑やかな道に出た。グレイスが言うには、ここがメインストリートらしい。 赤茶のレンガを敷きつめた地面に対し、露店は様々な木材やレンガを使って造られており、びっしりと建ち並んでいる。 すべてが初めて見るものばかりで、アタシは落ち着きなくキョロキョロと周りを見回した。 「前見て歩かねーとコケるぞ」 「そんな子供じゃありませんっ」 「どーだか」 ハッと鼻で笑ったグレイスは、唇の端を皮肉につり上げてアタシを見据えた。 グレイスお得意の、人を馬鹿にした笑顔だ。
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