9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここはどこ?」
ディオール学園へ向けて(一応)意気揚々と家を出たはずなのに、目の前に広がるのはどこかの街で。
首をひねれば、隣からアホかと言わんばかりの目で見られた。
「ちゃんと人の話を聞いてろ。
最初の目的地は『ルベリア』っつー魔道具から魔導書まで一式そろう、有名な魔術街だ。そこで学園生活に必要なモン揃えるからなって言ったろ」
「……言ったっけ?」
まったく身に覚えがなくて素直に述べれば、グレイスは呆れたのか、スルーして足早に街に入っていった。
……いつものことだけど、グレイスは素でヒドイ。まあ、5年も経てば態度も変わるだろうけど。
とそこまで考え、アタシは少し距離のあいたグレイスに向かって、慌てて歩き出した。
しばらく歩けば、更に賑やかな道に出た。グレイスが言うには、ここがメインストリートらしい。
赤茶のレンガを敷きつめた地面に対し、露店は様々な木材やレンガを使って造られており、びっしりと建ち並んでいる。
すべてが初めて見るものばかりで、アタシは落ち着きなくキョロキョロと周りを見回した。
「前見て歩かねーとコケるぞ」
「そんな子供じゃありませんっ」
「どーだか」
ハッと鼻で笑ったグレイスは、唇の端を皮肉につり上げてアタシを見据えた。
グレイスお得意の、人を馬鹿にした笑顔だ。
最初のコメントを投稿しよう!