01.魔導師の卵

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「お前危なっかしいからなぁ、この前も街で不審者に絡まれてたし」 「ちょっ、だからあれは違うって言ってるじゃん!」 「あーはいはい、そーゆーことにしといてやるよ」 明らかにアタシの言葉を信じていないグレイスは、軽くあしらうように鼻で笑う。 それが無性にムカついて、アタシはムキになって「だからっ」と再度説明を試みようとした──その時。 グレイスがいきなりバッと後ろを振り返った。 あまりに急なことでアタシは足を止め、思わず固まってグレイスを凝視する。 しかし数秒もしない内に、グレイスはアタシに向き直った。 「なっ、なに?」 ゴクリと唾を飲み込み、緊張の面持ちで口を開く。 しかし返ってきたのは、それはそれは殴りたくなるような答えだった。 「悪ィ悪ィ、いい女が居たもんでつい」 ヘラっと笑ったグレイスに悪びれた様子はまったくない。 それどころか、何事もなかったかのようにまた歩き出して。 アタシが顔をひきつらせていれば、グレイスは軽く振り返ってニヤっと笑った。 まるでイタズラに成功した子供みたいに。 「冗談だ冗談、マジになんなよ」 「なってないっ!!てかっ、冗談に聞こえなかった!?」 「冗談だし何でもねーよ。まぎらわしいことして悪かったな。気ィとりなおして行くぞー」 また歩き出したグレイスは飄々としていて。さっきと何ら変わらない背中からは、いつも通りのグレイスに見える。 ……本当に冗談だったらしい。 冗談に騙された悔しさを噛みしめながら、とりあえずアタシも歩き出した。 「…………」 前を行くグレイスが、険しい表情だったのには気づかなかった。
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