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光に誘われるように目覚めたのが、少女記憶の始まりだった──…
目を開けて入ってきた光景に、少女は数回まぶたを開閉した。
まだしっかり働かない頭で、ただぼーっと天井を眺めている。
と、数秒もしない内に、誰かの声が少女の耳に届いた。
「…目ェ覚めたのか?」
ほぼ反射的に声をたどり首を動かすと、少女はベッド脇の椅子に、一人の少年を発見した。
灰色がかった白銀の髪に、黒から少し色素の抜けたような、灰色の瞳をした少年だ。
「……覚めた、みたいだな」
少年はいつまでも反応しない少女に困ったのか、数秒の後にそう呟くと、ガタリと椅子から立ち上がった。
「とりあえず身体起こすぞ。どっか痛かったら言えよ」
未だに夢心地な少女を余所に、少年は半ば無理やり少女を引き起こす。
少女はされるがまま素直に起こされ、長い金髪をボサボサにしたまま、琥珀色の瞳でぼーっと少年を見つめた。
まるで、知らない誰かを見るように。
「……外傷はないみたいだな」
「……」
少女はピクリともしない。それでも少年は続けた。
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