プロローグ

3/4
前へ
/120ページ
次へ
「あーっと、まず自己紹介からか。俺はグレイス・アーバン、お前の幼なじみだ」 少年、グレイスは少女の反応を見ながら、静かに話しだした。 少女は初めて、ピクリと反応した。 「……幼なじみ?」 「そう、幼なじみ。つってもお前は、覚えてねーだろうけど」 「……どうして?」 まるで他人事のように訪ねる少女に、グレイスは小さく苦笑した。 「お前は事故にあって、記憶をなくしたんだ。だから俺のことも、唯一の身内である母親のこともきれいさっぱり忘れちまった」 瞳を細め苦笑するグレイスに、少女はただ首を傾げた。 まだ実感がないのか、未だに他人事のように感じている。 無理もない話だ。 少女はまだ10歳程度、すぐに理解できるはずもない。 それでも、グレイスはまたゆっくりと語りかけた。 「お前の名前はイヴ、イヴ・カンティーナだ。自分の名前くらいは覚えとけ」 「イヴ…」 小さく呟いた少女、イヴは小首を傾げながらグレイスを見やる。 不思議そうに見つめてくるイヴにグレイスは強く頷き、そうだと笑って見せた。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加