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「あーっと、まず自己紹介からか。俺はグレイス・アーバン、お前の幼なじみだ」
少年、グレイスは少女の反応を見ながら、静かに話しだした。
少女は初めて、ピクリと反応した。
「……幼なじみ?」
「そう、幼なじみ。つってもお前は、覚えてねーだろうけど」
「……どうして?」
まるで他人事のように訪ねる少女に、グレイスは小さく苦笑した。
「お前は事故にあって、記憶をなくしたんだ。だから俺のことも、唯一の身内である母親のこともきれいさっぱり忘れちまった」
瞳を細め苦笑するグレイスに、少女はただ首を傾げた。
まだ実感がないのか、未だに他人事のように感じている。
無理もない話だ。
少女はまだ10歳程度、すぐに理解できるはずもない。
それでも、グレイスはまたゆっくりと語りかけた。
「お前の名前はイヴ、イヴ・カンティーナだ。自分の名前くらいは覚えとけ」
「イヴ…」
小さく呟いた少女、イヴは小首を傾げながらグレイスを見やる。
不思議そうに見つめてくるイヴにグレイスは強く頷き、そうだと笑って見せた。
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