プロローグ

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「とりあえず目ェ覚ましたし、お前の母親呼んでくる」 そう言うと、グレイスは踵を返しドアに向かった。 そのまだ幼さの残る小さな背中を、イヴはただ見つめた。 よく理解しないまま、それでも頭のどこかで、一人になりたくないと思ったのだ。 するとそんなイヴの視線に気づいたのか、グレイスは振り返り、イヴを安心させるように笑いかけた。 「心配すんな。すぐ戻る」 それだけ言うと、グレイスは部屋を後にした。 イヴは不思議と、その言葉をうのみにし、安心を覚えた。 部屋を出ると数歩歩いた所で、グレイスは小さく、誰にも聞かれることなく呟いた。 「……お前だけは、守るっ」 強く奥歯を軋ませ、グレイスは固く目を閉ざす。 まるで誓いをたてるように言い放つと、ゆっくりと目を開き、また歩きだした。 強い瞳と確かな歩みに、もう迷いはなかった。 そうしてイヴが記憶をなくしてから、グレイスは両親不在のため、居候としてカンティーナ家に住んだ。 イヴの母、レイラ・カンティーナは穏やかな人柄と持ち前の包容力で、2人の子供に最大限の愛情をそそいだ。 そんな愛情をもらいながら、2人は次第に"幼なじみ"のように打ち解け、6年の月日が流れた。 そして今、運命は大きく軋み、歯車は回り始めた…──
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