―序章―深夜の神さま

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「やぁ、はじめまして――君」 初対面の彼は僕の名前を知っていた。 僕も、はじめまして、と返してなんと呼べばいいのか分からず、口ごもっていると、彼は、「僕のことは神さまと呼んでくれ」と言った。 神さまは「君はしがない小説家希望の青年、だよね」と問い掛けた。 その通りであった。僕は小説家を目指す一青年でしかない。 だから僕はその通りだと答えた。 神さまは「正直者は好きだよ。神さまってそういうものじゃないかな?」と言った。 神さまは続けた。 「今から君にお伽話をしようと思うんだ。君がその御話を覚えて、書いてみるといい。良いことが起きるよ」 よく分からなかったが神さまが言うんだ、多分良いことが起きるだろう。 僕はジーンズのポケットを弄って、数枚のしわくちゃなレシートを取り出した。 神さまはしばらくポカンとしていたが、僕の意図を悟ると笑い出した。 「大丈夫だよ。君は御話を忘れない。神さまが言うんだ、間違いないさ」 その話を聞いた僕はレシートをポケットに仕舞い直して神さまに向き直った。 神さまは、クスリと笑うと話し出した。 その御話を―――
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