―御話―絶対の王さま

2/2
前へ
/12ページ
次へ
――――昔々 あるところに一人の王さまがおりました。 王さまの言うことは絶対で、王さまの言うことはなんでも叶いました。 王さまはある時、見たことがない怪獣が見たいと言いました。 お城の大臣達は困ってしまいました。 そして、たくさん、たくさん考えた末に一人の大臣がいい案を思いつきました。 「そうだ、人と動物をくっつけてしまおう。こんな怪獣、王さまと言えど見たことないだろう」 大臣達はそれを実行に移しました。 国から人をさらってきて、色んな実験をしました。 たくさん実験して、たくさん失敗して、たくさんの人が死んでしまいました。 そして一人の怪獣が出来ました。 人の体に蝙蝠の羽、ライオンの頭、牛の足、蛇の尻尾がついた見るも恐ろしい怪物でした。 大臣達は出来た怪物を檻に入れて、王さまに見せに行きました。 王さまは大喜びでその怪物を見ました。 そして、怪物に飽きた王さまは怪物を殺すように言いました。 大臣はそれを実行して、怪物を殺しました。 次に王さまは見たことがない宝石を持ってこいと言いました。 また大臣達は困ってしまいました。 大臣達はたくさん、たくさん考えました。 そして一人の大臣がいい案を思いつきました。 「人の命から綺麗な宝石が出来ると聞いたことがある。その宝石なら王さまも見たことがない筈だ」 大臣達は実行に移しました。 たくさんの人を材料にしました。 たくさん、たくさん材料にしました。 それでも大きな宝石は出来ません。 大臣達はもっとたくさんの人を材料にしました。 たくさん、たくさん。 今でもその国では宝石を作っています。 たくさんの人の命を材料にして。 めでたしめでたし―――
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加