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僕は驚愕した。
なんだ、このお伽話は。
まるで、神さまが悪戯に狂気と童話を混ぜ合わせたみたいじゃないか。
僕が立ち尽くしていると、語り終えた神さまは、またクスリと笑った。
「どうだったかな?僕のお伽話は」
子供には聞かせられないような内容だったよ。めでたく終わらなかったし。
僕は正直に答えた。
神さまは笑い声を一層大きくして言った。「まあ確かに、普通に見ればめでたく終わらなかったけどね。でも考えてみなよ、材料にされた彼等にとってはバッドエンドかもしれないけど、大臣達は絶対の王さまの言いつけを守ったにすぎないんだよ。大臣達は生き残りましためでたしめでたし」
ちっともめでたくない。
でもそういう理解もあるのか。このお話は面白いかもしれない。
僕のどこが面白かったのか分からないけど、神さまは笑うと「さぁ、早く家にお帰り。そろそろ時間切れだよ」と言った。
僕は、まだ聞きたいと抗議した。
神さまは「今日の話はこれでおしまい。また会おう、――君」と言って背を向けて闇に消え去った。
僕はしばらく立ち尽くした後、家に帰ることにした。
お伽話を書くために。
だから今こうして筆を取っている。
神さまの言うことが正しいならば、なにか良いことが起きる筈だ。
でも、多分僕はそんなこと言われなくても書いていただろう。
僕は書いた。
神さまの話しはすぐに思い出せた。
原稿用紙二枚程の御話を書き終えて、今このあとがきを書いている。
神さまにはまた会えるだろうけど、彼の話しは一つがとても短い。
彼のことを忘れないために、僕は神さまとの会話をこうしてあとがきで書いている。
さて、そろそろ夜が明けてきた。
これでこのお話はお終いにしよう。
次のお話、御話を書くのはまた彼に会った時。
それまで僕は待つとしよう。
最初の御話、これでおしまい。
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