第一話【君もその一員】

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──── 入って来なさい、という九条の声の後、少し間を置いて扉が開いた。 クラス中の視線が扉へ集まる。 「ッ………暗ぁ…!!」 教壇へ向かう転入生を見た静流は、思わず大変失礼なことを口に出した。 声には出さなかったものの、クラスの大半の者がそう思っただろう。 え?転入生──洋八が暗いだって? そう思ったあなた!! …この容姿を見れば分かるだろう。 教壇に上がったのは、長髪の人。 前髪も長い。 リュックサックを抱き締めてプルプルと震えている。 学ランを見てやっと男だと分かった。 九条は生徒達の反応を見て必死に笑いを堪えている。 「ククッ…それでは…っ…自己紹介を」 最早堪えていない。 九条に促され、長髪な洋八はコクリと頷いた。まるで本当に暗く大人しい転入生だ。なんという演技力。というより転入初日からよくそんなことが出来るな。 まぁ、だからこそ、このクラスに入ったのだろう。 全員が、心配そうな面持ちで洋八を見つめる。否、零と小愛持は既に無関心だ。 ふぁっさー 突然発せられた、この緊迫した空気にそぐわない間抜けな効果音。 クラス中の視線は、洋八の頭上。 そこに舞うのは、長髪。 …の、カツラ。 さっきまで無関心だった零と小愛持でさえ目を見開いて注目した。 床にファサ…とカツラが落ちる。 そして再び、皆の視線は洋八へと戻った。 全員が自分へ注目したのを確認すると、洋八は得意の眩しいスマイルを発動した。 「どや、皆ァ!!この登場、めっちゃインパクトあるやろ!?」 「あり過ぎるよ!!ツッコミも追い付かねーし!!」 我慢出来ない男、静流は、思わず突っ込んだ。洋八は満足げである。 「うんうん、ええなぁ、ノリがええわ!早速このクラス入れて良かった思うでぇ!!あ、自己紹介しますっ。俺は大阪から来ました加藤洋八言います。素敵な学園ライフが送れるといいなって思います、よろしくお願いします!!」 賑やかなこと大好きな静流と湊が真っ先に拍手をし、最後にはクラス全体が拍手に包まれた。 「チッ…またうるさい奴が増えやがった」 「むしろ転校しようかな…」 …否、零と小愛持以外。 ────
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