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拍手は止み、洋八は九条に指定された席へ向かった。静流の前、煌雅の左。一番前だ。…しかも先生の真ん前である。
初っ端からこんな扱いだが洋八は気にしていない。むしろ喜んでいるようだ。賑やかそうな人の近くに座れたからだろう。
「それでは、休み明けは特殊能力訓練強化です…、グラウンドに出て準備をしておきなさい」
そう言って九条が出て行くと、教室内は徐々にざわめき始める。
「早速、特殊なんちゃらっちゅーヤツか」
一番気になっていた授業が、まさか最初に受けられるとは。体から金色のオーラでも出ているのではないかという程、今の洋八は胸だけでは納まらず全身から期待の汁が溢れていた。
「洋八くん…?なんか眩しいんだけど…」
「え、え?」
突然声を掛けられその主を探すが見当たらない。
すると、学ランの裾をちょいちょいと引っ張られた。
下を見ると、小さな女の子が頬を膨らまして見上げている。千心だ。
「…小さいから見つかりにくかったの?」
「へ!?いや、ちょっとボケーッとしてただけやて!!なっはっはっは!!」
千心は、ホントに?と言って物凄く純粋な目で笑ったので、洋八は頷くしかなかった。本当は、千心が見えていなかったけど。
そんなことより、と千心は話を戻す。
「さっき洋八くんが眩しかったのは、能力なの?」
「眩し…かった?いや、俺まだ能力なんてあるかも分からんし、九条先生は開花してへんだけって言ってて」
「えっ!?洋八、自分の能力知らないのかよ!!」
「このクラスって結構能力のレベル高いのに!!ある意味凄いね洋八!!」
うるさい2人、静流と湊が会話に割り込んできた。この勢いに洋八は少々押され気味である。
そんなことを言われても、洋八をこのクラスにしたのは九条だ。成り行きに任せるしかない、と彼は割り切っている。
「うーん、眩しい、か。前の学校でもよく言われたで、それ。でも理由は能力なんかじゃなくて、俺が輝かしい存在だからオーラが出てんだって誰かが言ってたんだゾ!!って誰もいないィィィ!!」
虚空にツッコミを入れて、準備と言われても何を持って行けばいいか分からないので大切な物が入ったリュックサックを背負い、グラウンドへと駆け出した。
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