12人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
さぁ正門を抜けようとしたその時、ブレーキを掛けた訳でもないのに急に自転車が止まった。その勢いで洋八は自転車から落ちた。スピードが結構出ていたので手を少し擦り剥いてしまった。
何が起きたんだと立ち上がって自転車を見ると、後輪に鉄の棒が刺さっていた。それがつっかえて車輪が止まったのだろう。
転校早々イジメかよ、と辺りを見回して犯人を捜していると、突如目の前に白鳩の群れがやって来た。
「僕も貴方を驚かせようと思ったのですが…少々やり過ぎましたね」
鳩の群れの中から声が聞こえた。その瞬間、鳩は一斉に夕空へ舞い上がった。
しばらくその光景に見惚れていると、上空で鳩が爆発した。ポカンと口を開けてなんとも間抜けな顔をする洋八の肩を、目の前にいる誰かに叩かれた。
「僕の自己紹介は、インパクトありましたか?」
「…イリュージョン?」
黒のローブ、黒のネクタイ、黒のワイシャツ、黒のスラックス、黒の靴。赤の髪と銀縁の眼鏡が存在感を放つ男、黒瀬煌雅。洋八の自転車の後輪に刺さった鉄の棒を手に取り、小さく笑った。
自分を転ばせた犯人がこいつだと分かると、我に返った。![image=379699471.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/379699471.jpg?width=800&format=jpg)
![image=379699471.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/379699471.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!