第二話【てるてるボーイ】

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さぁ正門を抜けようとしたその時、ブレーキを掛けた訳でもないのに急に自転車が止まった。その勢いで洋八は自転車から落ちた。スピードが結構出ていたので手を少し擦り剥いてしまった。 何が起きたんだと立ち上がって自転車を見ると、後輪に鉄の棒が刺さっていた。それがつっかえて車輪が止まったのだろう。 転校早々イジメかよ、と辺りを見回して犯人を捜していると、突如目の前に白鳩の群れがやって来た。 「僕も貴方を驚かせようと思ったのですが…少々やり過ぎましたね」 鳩の群れの中から声が聞こえた。その瞬間、鳩は一斉に夕空へ舞い上がった。 しばらくその光景に見惚れていると、上空で鳩が爆発した。ポカンと口を開けてなんとも間抜けな顔をする洋八の肩を、目の前にいる誰かに叩かれた。 「僕の自己紹介は、インパクトありましたか?」 「…イリュージョン?」 黒のローブ、黒のネクタイ、黒のワイシャツ、黒のスラックス、黒の靴。赤の髪と銀縁の眼鏡が存在感を放つ男、黒瀬煌雅。洋八の自転車の後輪に刺さった鉄の棒を手に取り、小さく笑った。 自分を転ばせた犯人がこいつだと分かると、我に返った。image=379699471.jpg
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