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何が面白いのか分からないが睨めっこが終わって少し安堵し、取り敢えずありがとうございます、と返事をした。
彼は満足そうに微笑み、机上の書類に目を落とす。それをじっくり見終わると、不意に笑い声を上げた。
「アハハハッ…!!特技がボケとツッコミの両刀使いに眩しいスマイル、ですか…。良い、実に面白い…。それでは、早速自由にアピールして貰いましょうか」
書類から目を離し、再び洋八の顔をじっと見つめる。
え…アピール…って、この流れで行ったらその特技を披露するんか?でも面接官は見つめるだけだからツッコミ出来へんしボケるのも難しいし…、あ、笑ったらええんか?逆に睨めっこで笑ったら勝ちか!!わぁ、なんやこの状況…、え、もう、マジで…
「なんでやねーん!!」
洋八は勢いよく立ち上がり、倒れる椅子を気にせず、頭の中のごたごたを全て吐き出すかのように叫んだ。
ねーんねーん…と静かな会場に虚しい叫びが微かに木霊する。洋八はおまけに眩しいスマイルをプレゼントした。
面接官は今まで細めていた目を最大限に見開き一瞬固まると、再び目を細めて喉の奥で笑い出した。
「面白い、…面接でそれほどの大声を上げる勇気…典型的なツッコミを叫ぶだけという度胸…意味のない満面の笑み!!気に入りましたよ…加藤洋八君」
彼の口は弧を描く。そして立ち上がり、洋八に拍手を贈った。
「え…、それって…!!」
「勿論、合格です。明日から私のクラスで頑張って頂きます」
この人の生徒になるのか…と少し顔が引きつりそうになったが、合格という事実の嬉しさが大いに勝り、跳び上がって喜んだ。
何度も何度も頭を下げ、面接会場を出た。
「よっしゃ…!!俺の学園ライフスタートやァァア!!」
相変わらず物音一つもしない廊下を、騒がしく駆けていった。これから始まる学園生活に思いを馳せて…。
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