専務の野望

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「森次長!」  不意に呼び止められた。 真っ黒に日焼けした瀧澤(たきざわ)専務だ。 根っからのアウトドア派で、学生時代はヨットでならし、国体にも出たという。 50代半ばになるがバーバリーを颯爽(さっそう)と着こなし、女性社員にも人気があった。 祐司が10年前に明名物産の入社試験を受けた際は人事部長であり、後々に瀧澤専務だけが祐司を後押ししてくれたと聞いたことがあった。 「食事は摂ったのかい?」 「いえこれからです」 「ちょうどよかった。たまには付き合えよ。話したいこともあるし」 「あっ、はい。お供します」 明名物産において上役からの食事の誘いは言わば業務命令のようなもので、断る選択肢はなかった。
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