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「上行くか?」
「上はラウンジしか?」
「ラウンジじゃ嫌かい?」
「いえ、そんなことは……」
「たまにはいいだろ」
「えぇ、はい」
戸惑う裕司を意に介さない専務。
下層階には多くのテナントが入っており、評判のいい飲食店もいくつかあった。
上役が部下を誘う際は下層階で済ますのが常で、ラウンジはゲストと役員の専用だった。
「明名に入ってきたからには、ここでランチが食えるように頑張れ」
研修官に言われて発奮したのを思い出す裕司。
(もう10年か……)
「どうした?」
「いえ、新人研修以来だったものですから」
「そう畏(かしこ)まることはないさ」
瀧澤専務に背中を押されて45階で停まったエレベーターを降りた。
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