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祐司は直属上司を飛び超えての急な誘いであり、役員専用のラウンジで、しかも個室まで使う待遇について専務の真意を推(お)し量(はか)った。
大胆ではあるが冷静沈着な専務が無計画に自分をランチやラウンジに誘うはずがない。
喉まで出かかった「お話しとは?」の切り口上を寸でのとこで留めていた。
専務の設定しているであろう流れに逆らうのは無礼な気がした。
いや、悪い知らせなら出来るだけ後回しにしたかっただけなのかもしれない。
「あっ話しなんだが、森君、アメリカに行かないか?。急なんだけど」
「アメリカですか?」
唐突な出だしに戸惑う裕司。
「近畿大学で黒マグロの完全養殖が成功したのは知ってるだろ?」
「はい、築地にも出回り始めたようですね」
「そこでだ。鯨と同じように天然マグロに全面的な規制がかかるのは時間の問題なんだ。となると世界的に需要が高まっている中、養殖の依存率は飛躍的に上がる」
「はぁ……」
専務の意図が掴めない。
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