専務の野望

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「出所は俺なんだが、メキシコに黒マグロの養殖プラントをつくるプロジェクトを立案してて、そのメンバーを人選しているところなんだよ」 「それが私にということで?」 どうやら悪い知らせではないらしい。 「そういうこと。リーダーは俺がやるけど他のプロジェクトにもかんでるから現地入り浸りってわけにはいかない。同行するスタッフにメインで動いてもらうことになる」 「何人くらいのスタッフになるのでしょうか?」 「同行してもらうスタッフは一人だけだ。あとはロスの支社から二人、メキシコではサンミゲロという水産会社とタッグを組む」 「メキシコなのに何故ロスなんですか?」 「メキシコには支社はないからな。単純に一番近いロス支社ってことと、メキシコとの商売を仕切ってきたのはロス支社だ。まずはそのパイプを使おうということだ」 「で、任期はどれくらいになるのでしょうか?」 「わからん。計画では2年だが、あくまでプラントの完成までの最短期間としての想定だ。実際にマグロが成魚になるまで、そこから3年はかかるし、試験プラントの成否にもよるから、実際に何年かかるかは、やってみなきゃわからん」 矢継ぎ早に質問する裕司。期待と不安の入り交じる胸の内がそのまま顕れている。
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