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球団職員も、空気を読んだのかそれ以上の詮索はしなかった。話を終え、グラウンドに戻ろうとした小倉の後に、球団職員も続いた。まだ、首を切られる人間がいるのだろう。小倉は、同僚のうち誰が切られてしまうのかを考えないようにしながら、廊下を一歩一歩歩き続けた。
その後、一人が球団職員に呼び出され、球場の中へと入って行った。その一人とは、田淵だった。
「なんとも言えないよな」
そう言うと、田淵は下を向き、再び口をつぐんだ。そのまま猪口に酒を流し込み、一文字に結んだ口を開いて、ゆっくりと煽る。小倉も、何かを言うつもりにはなれなかった。急に現実が見えたような、そんな気が小倉にはしていた。
今いるのは、普段行かないような、古びた居酒屋だった。いつも飲みに行くような店には、互いに首になった身としては、顔を出し辛かった。
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