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そういってバロックさんは歩き出す。
「ちょ、ちょっと!!」
私は慌ててそれを追い掛けた。
「どういうことなのか全然わからない、ここ日本じゃないの? 私確かバイクで――」
私は聞きたかったこと全て話そうと口を開いたが、バロックさんが人差し指で口を閉じる。
「屋敷についたら、話ききますから」
そう言われては黙るしかない。
しかしおかしな世界だ。
私と彼以外誰もいないのだろうか。
あ、いや、停留所の創さんがいるか。
少し歩くと、また別の停留所がみえた。
今度は屋敷行きと書かれている。
「あの、バスってそんなに何本もあるもんなんですか?」
「ええ、まあ。大体すぐ来ますよ」
バロックさんがそういうと、視界の端からバスがみえた。
普通のバスだ。
(そこは猫バスとかじゃないのね……)
ちょっとがっかりした。
猫バスのもふもふ具合は味わってみたかったからだ。
「さ、どうぞ」
「え、あ、でも、お金……」
「大丈夫ですよ」
私は押されて中に入る。
本当に普通のバスだ。
中には、誰もいなかった。
(何処に座ろうかな……)
あまりに誰もいないので、立ち尽くしているとバロックさんが私の横を通り、二人席の場所に座った。
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