01:《Terminal》

4/11
前へ
/41ページ
次へ
「私の隣にどうぞ」 バロックさんはそういって隣をぽんぽん、と叩いた。 私は言われたとおり隣に座る。 「発車してOKですよ」 その声でバスは動き出した。 ゆっくりとドアが閉まり、そして景色が動き出す。 「………」 やはり何処までいっても白い景色は変わらないようだ。 「少しの間、舌を噛まないように気をつけてくださいね」 「え?」 バロックさんがそういった次の瞬間、景色は一変した。 いや景色じゃない。 多分――バスの速度だ。 「きゃぁああぁあぁあぁぁあああああ!?」 ジェットコースター、いや、新幹線、地下鉄だろうか。 明らかにバスが出せる速度じゃない。 気持ち悪さに目つぶる。 「カカカッ! 面白いお嬢さんだ!」 アンタの方が面白いわッ!!! 「お、見えましたよ」 「え?」 声が聞こえて目を開けると、景色は全く変貌していた。 徐々に速度が落ちていく。 よくみるとそれは街だった。 「嘘――……」 真っ白な雪が消えていた。 変わりに奇妙な町並みがみえる。 日本の昔の町並みと、ヨーロッパのような町並みが合わさった景色だった。  
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加